2026年8月8日

輸入無在庫ECの運営を10体のAIに任せ、人間の仕事を4つだけ残した

noct 本業を持ちながら、DOT AI 自動運転部・水曜日チームに参加。輸入無在庫販売ECを24時間無人で運営するシステム「ec-ops」で、第1期コンペティションMVP第3位を受賞。


「前にうまくいかなかったこと」を、AIで解き直す

── MVP第3位、おめでとうございます。受賞したとき、率直にどう思いましたか。

他にも優れたプロダクトを作っている方が大勢いたので、評価されて嬉しかったです。

── そもそも、なぜECだったんですか。

以前やってみようと思って、うまくいかなかったことなんです。それをAIを使えばうまく解決できるのでは、と思って、ECサイトの構築にチャレンジしました。

輸入の無在庫販売なんですが、やることが多いんですよね。商品を見つけて、権利まわりを確認して、日本語の説明文を書いて、サイトに載せて、価格を調整して、問い合わせに答えて。全部人力でやると、一人では回りません。

── 今回それを、どこまで自動化したんですか。

商品発掘から出品、価格調整、顧客対応まで一通りです。人間が関与するのは4つだけにしました。kill switch を押すこと、KPIを決めること、閾値を変えること、あとから監査すること。この4種類です。


10体のエージェントと、LLMを使わない5つのジョブ

── 構成を教えてください。

5層に分けています。一番下がCLIで7種類。CJDropのAPI、ショップサイト操作、ガードレール、イベント、レポート、価格取得、それと全体制御の ecopscli。kill switch もここに入っています。

その上にワークフロー管理があって、さらに上にLLMエージェントが10体。著作権・商標をチェックするguardrail、商品説明を書くdescription、それをレビューするdescription_reviewer、サイトに載せるsite_ops、載せた後の見た目を見るsite_reviewer、画像品質を見るvision_qa、Gmailの問い合わせを分類して返信案を作るcs、その返信をレビューするcs_reviewer。

── レビュー役が多いですね。

書く側と見る側を必ず分けています。同じエージェントに書かせて自己採点させても、まず甘くなるので。説明文も、掲載後のサイトも、CSの返信も、それぞれ別のエージェントが見ます。

── 全部をLLMにやらせているわけではない、と。

そうですね。高頻度で決定論的に処理できるものは、LLMを使わない独立したジョブとして5つ切り出しました。商品発掘のスコアリング、出品候補の選定、在庫とコストの取り込み、価格調整、週次の全件再評価です。

価格調整は7つのルールの数式でやっています。ここをLLMに投げても、遅くて、ブレて、コストがかかるだけなので。LLMが要る場所と要らない場所を分けることが、そのまま安定性になりました。


一番しんどかったのは、GUI操作

── 3週間で作り切るうえで、一番しんどかったところは。

外部のシステムでGUI操作を前提としている作業を、どうやってAIの作業に落とし込むかです。ここが一番苦労しました。

APIが公開されているものは、コマンドベースでAIに実行してもらえるんです。そこは何も問題ない。でも、GUIしかないものを間違いなく実行させるにはどうすればいいのか。ここの解決に時間がかかりました。

自動化を進めていくと、結局この壁に必ずぶつかると思います。技術的な難しさというより、「相手のシステムがそもそも人間の手を前提に作られている」という問題なので。


エージェントを、フォルダごとコピーできる形にする

── 逆に、これは刺さったと思う設計は。

AIを役割ごとに分けたこと。そして分けたときに、同じフォーマットのフォルダをコピーすれば、すぐ次のエージェントを作れる状態にテンプレートを用意したことです。

各エージェントのフォルダには、実行プロンプト、設定ファイル、スキル定義、参照する資料、DBアクセス用のスクリプトが同じ並びで入っています。新しい役割が必要になったら、フォルダごと複製して中身を書き換えるだけで済む。

これは今回のシステムに限らず、AIを使った自動化全般に使えそうだと思っています。

── 知識の持たせ方も三層に分けているんですよね。

エージェントの知識を、書き換えていい部分と、そうでない部分に分けています。役割定義や禁止事項は LOCKED にして、人間だけが四半期に一度見直す。評価基準やチェック項目は EDITABLE にして、改善層のAIが月に4回まで自動で書き換えられる。参照するガイドラインは月に2回まで。

── 自動で書き換えるのは怖くないですか。

だから四層で守っています。LOCKEDが改変されていないか、EDITABLEが伸びすぎていないか、設定ファイルの整合性、変更量の上限。gitのフックにも仕込んであるので、pre-commit と pre-push の両方で止まります。

自動改善させるなら、暴走したときに戻せるところまで作らないと運用できないと思っています。Phase 1が終わった時点で、テストは533件通っている状態です。


「足りない」と思っていた場所を、そのまま指摘された

── 審査はかなり厳しめだったと思います。

自分に不足しているなと感じていた部分、特にマーケティングや利益率といったビジネス的な視点について指摘をいただきました。

ありがたかったのは、自分の中にある課題と、外からの評価が一致していたことです。今後はそこを補っていければ成長できそうだな、と。指針がはっきりしたのが良かったです。

── 他の参加者のピッチはどうでしたか。

皆さん面白い視点を持っている方が多いなというのと、プレゼン資料を作るのが上手だなと感じました。AIを使う土台さえあれば、あとはアイデア勝負な部分が多そうだなと思います。

── 参加してみて、正直どうでしたか。

期間が短いことと、本業との兼ね合いで、どれだけ注力できたか。苦戦した方もいるのかなと思います。

私もちょうど仕事環境が変わったタイミングだったこともあって、時間との戦いでした。ただ、他の方のアイデアを聞きながら進めていけるのは楽しかったです。


「わからないことは、とにかく質問してほしい」

── 最後に、これから入ってくる人に一言お願いします。

いろんな得意分野を持った方が大勢いますので、わからないことはとにかく質問してみてください。

そして、私の苦手なところを教えてください(笑)。

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